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乳腺の炎症性疾患はその発生様式から急性乳腺炎と慢性乳腺炎に大別される.前者の多くは出産後早期の授乳期に発症し,原因の多くは乳汁うっ滞によるもので,ほかに子どもの乳歯による乳頭の外傷のこともある.一方,後者は一般に乳輪下膿瘍という形式で発症する.
Ⅰ.急性乳腺炎
◆病態と診断
・急性乳腺炎は産褥期や授乳期,特に出産後早期(2~3週目)に乳汁分泌量が急激に増加する時期に発症しやすい.基本的な原因は乳汁の排出不良でうっ滞が生じ,非細菌性のうっ滞性乳腺炎になる.乳汁うっ滞に細菌性感染が加わると急性化膿性乳腺炎となる.
・授乳に不慣れな初産婦では乳汁がうっ滞しやすいので注意が必要である.
・診断では病歴,視触診が重要で,必要に応じて超音波を行う.乳房の一部または全体の疼痛,発赤,腫脹,熱感,硬結などの局所炎症所見,時に悪寒戦慄,発熱などの全身症状を伴う場合もある.
・鑑別診断として炎症性乳癌を常