脊髄血管障害

vascular disorders of the spinal cord

八木田佳樹

（川崎医科大学教授・脳卒中医学）

頻度　あまりみない

治療のポイント

・脊髄梗塞は大動脈解離や大動脈手術に伴うものが多く，特発性の頻度は低い．

・亜急性に進行する脊髄症状では脊髄硬膜動静脈瘻を疑う．中高年男性に多い．

・急性発症の脊髄症状では脊髄硬膜外血腫を疑う．症状が片側の場合，脳梗塞との鑑別が必要である．

◆病態と診断

A病態

・脊髄血管障害は脳血管障害に比べてまれである．

・虚血性と出血性の病態がある．

・脊髄梗塞の代表的な責任血管は前脊髄動脈であり，前脊髄動脈症候群を呈する．前脊髄動脈症候群では腰背部痛，対麻痺または四肢麻痺，感覚障害，膀胱直腸障害を急性発症する．感覚障害は解離性感覚障害であり，障害レベル以下で温痛覚鈍麻が生じ，触覚鈍麻は軽度であり，深部感覚障害はみられない．

B診断

・脊髄梗塞の原因には動脈硬化，大動脈解離などがある．またステント留置などの大動脈手術の合併症として生じることがありうる．診断には脊髄MRIが有用であり，拡

初出:今日の治療指針2025年版 発行:2025年1月

収載:医学書院 医療情報サービス（2025年4月17日　掲-ID：c25_05718-00_a015z0021）