診療支援
診断

推薦の序

 十数年前に以下のように考え,書いた.


 〈日本の医療現場のEBM〉が臨床的問題解決の強力な武器として生き残れるかどうかは,臨床実践の中での輝きの如何にかかっている.もしも,EBMとは世代的に遠い‘古典的’名医が,私達が遭遇しているさまざまな難問をEBMを一切使わず,合理的に,しかも素早く解決し続けたら,どの世代も〈医療現場のEBM〉を見限るに違いない.逆に,EBMの素養のある中堅内科医が,頭脳に蓄積された多くのエビデンスの妥当性を次々に現場で披露することで,‘古典的’名医の回答に一層の科学的豊かさを付け加える展開をすれば,関係各位からの割れんばかりの内心の拍手は間違いがない.ということは,特にジェネラリストを目指す若手世代には,EBMの手法の修得と平行した一般内科や総合診療の臨床力の必死の獲得が不可欠になる.コンピュータが何台も並んで,瞬時の情報獲得ができるようになったとしても,それだけで良質の臨床とはいえない.そういう思案をすべき岐路に,〈日本の医療現場のEBM〉はそろそろさしかかっていると思われる.(『“大リーガー医”に学ぶ』282頁,医学書院,2002年)

 本書の著者である上田剛士君こそ,その「EBMの素養のある中堅内科医」ぴったりである.およそ7年前に,本書を監修した酒見英太君の文字通り跡を追って洛和会音羽病院(当時698床)に入職してきた上田君だが,現在は急性期病院に特化した洛和会丸太町病院(137床)の救急・総合診療科の医長として,同科を率いている.弊会の大小2病院の臨床現場で汗をかき,それぞれの診療上の特性を踏まえたうえでEBMを駆使している.

 本書は,上田君の単独著ではあるが,監修の枠をはるかに超えた酒見君の添削ぶりを身近に眺めると,両名の共著に近い観がある.正に師弟コンビの合作といえよう.エビデンスにあふれる文体はともすれば硬質で,無味乾燥に陥りやすいもの

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