診療支援
診断

 医療を大きく診断・治療の2つのカテゴリーに分けるならば,若手医師にとってより困るのは診断であろう.病名が分かれば治療を調べることはできるが,診断が付かない段階では教科書を調べるとしてもどこを調べてよいのか分からないからである.

 病態については過去の偉業の集積である『ハリソン内科学』や『朝倉内科学』などは優れた教科書である.また日進月歩の治療学については『UpToDate』が世界中でスタンダード化しつつある教科書といえる.

 一方,診断学については『Batesの診察法』『McGeeの身体診断学』『Wallachの検査値診断マニュアル』(これらはすべて和訳もされている)といった良書はあるが,いずれも確定診断に至るまでの一連の過程(病歴・身体所見・検査)をすべては網羅はしておらず,いわば診断学の断片を記したものに留まっている.

 そこで病歴,身体所見,検査という診断学の一連の流れのすべてを網羅し,かつエビデンスに基づく教科書がほしいというのが本書誕生のきっかけである.


 本書の特徴としてまずできる限り具体的な数字を記載することとした.多い・少ない,大きい・小さいなどの用語は抽象的で具体的なイメージはもてない.またその解釈も状況により大きく変わるからだ.

 また診断の9割近くは病歴と身体所見で決まるとされるが,これらは簡便で侵襲性がないだけでなく,医療コストを増大させない利点がある.そのため本書では診断の一連の流れである疫学・病歴・身体所見・検査所見のいずれについても言及しながら,病歴・身体所見については特に深く掘り下げて記載した.

 本書は若手医師の方々がエビデンスに基づいた診断学を実践するうえで,必ず役立つものと信じている.診断に悩む症例に遭遇したときは当然のことであるが,初期研修医で内科をローテーションする人,エビデンスに基づいた診断学を実践したい人,後輩研修医の指導にあたる人,病

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