急性腹症総論
●40%は診断がつかないが,虫垂炎・胆石/胆囊炎・イレウス・尿管結石の4大疾患はおさえる.
●帰宅させる前に特に否定しなければならないものは血管系疾患(心筋梗塞・腹部大動脈瘤破裂・SMA塞栓症)と,急性膵炎・消化管穿孔・子宮外(異所性)妊娠である.
●急性腹症は救急外来の4-10%を占めるとされ,非常に多い症候である.
●腹部疾患以外でも腹痛を呈しうる.
▶心筋梗塞を代表とする胸部疾患も鑑別にあがる.
▶全身性疾患としては糖尿病ケトアシドーシス,尿毒症,急性間欠性ポルフィリン症,重金属中毒(鉛疝痛),麻薬禁断症状,毒グモ咬創,家族性地中海熱,Addison病も鑑別にあがる.
●アルコール性肝炎や帯状疱疹,Fitz-Hugh-Curtis症候群,Henoch-Schönlein症候群も鑑別としてもれやすいので注意する.
急性腹症の病歴
●これまで健康だった患者が6時間以上続く腹痛を訴えれば危険徴候と考える.
●突然の激しい腹痛は破れる・裂ける・詰まる・捻れる疾患で重篤と考える.
●便意が強いのは,便秘や直腸炎以外に骨盤腔内の腹膜刺激症状(例:腹部大動脈瘤破裂)の可能性も考える.
疼痛部位による鑑別
●心窩部痛は上部消化管疾患の可能性が高いが,肝胆道系疾患を忘れてはいけない.
●右季肋部痛は胆道系疾患の可能性が高い.
●下腹部痛は尿路疾患,小腸疾患,産婦人科疾患の可能性が高い.特に右下腹部痛の場合は虫垂炎を考える.
●臍周囲の疼痛は小腸疾患の可能性が高い.
●腹痛部位による原因疾患の推測
●腹部圧痛部位
急性腹症の身体所見
●疼痛部位の診察(肝叩打痛・Murphy徴候・McBurney圧痛など)は,左右差を必ず比較する.
●診察では鼠径部や精巣,直腸を省かない.
●腹膜刺激症状があれば外科的な疾患が多い.腹膜刺激症状をチェックするには反跳痛(rebound)や筋性防御(defence)よりも,hee