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2 虫垂炎

虫垂炎

頻度の高い疾患だが,初診時に1/3は見落とすとされ,小児・妊婦・高齢者・免疫不全者では特に注意を要する.

リンパ組織の発達の著しい10-20歳代に発症しやすいとされるが,すべての年齢層で発症はありうる.1.4:1で男性に多い〔Am J Epidemiol. 1990 Nov; 132(5): 910-25〕.

正診率は画像検査が発達した現在でもあまり改善していない〔JAMA. 2001 Oct 10; 286(14): 1748-53〕.

虫垂炎の病歴

嘔吐が痛みに先行してあれば,かなり否定的である.

心窩部から右下腹部への痛みの移動(migration),以前にない痛みも診断に有用である.

消化管症状(食欲低下,嘔気・嘔吐,下痢・便秘)の有無は診断にあまり貢献しない.特に骨盤腔内の炎症により生じた軽度の下痢で虫垂炎を否定してはいけない.

疼痛→嘔気・嘔吐→圧痛→発熱→白血球増加の順で起こるとされる.

虫垂炎の手術歴があれば可能性は非常に下がるが,断端の虫垂炎(stump appendicitis)の報告例あり〔Am J Surg. 2012 Apr; 203(4): 503-7〕.

虫垂炎の身体所見

右下腹部の圧痛が最も重要であるが,微熱と腹膜刺激症状も確認する.

腹膜刺激症状では,heel-drop jarring testが最も有用である.

腸腰筋への炎症波及を示唆するpsoas徴候も忘れずにチェックするようにしたい.また閉鎖筋・骨盤腔内への炎症波及を示唆するobturator徴候/直腸診圧痛の感度や,虫垂に間接的に負荷をかけるRovsing徴候/Rosenstein徴候の特異度は一般的に低いとされており,またエビデンスも限られている.しかし,腹膜刺激症状の出にくい後面・骨盤腔内への炎症波及に対して,時に貴重な情報が得られる.

虫垂穿孔前の高体温は稀で,急性

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