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3 腸閉塞総論

腸閉塞の原因

腸閉塞は機械的(さらに単純性と血行障害を伴う複雑性がある)と,機能的(麻痺性)に分けられる.

機械的腸閉塞の60-80%を占める小腸閉塞では癒着が多いが,ヘルニアによるものから鑑別を始める.一方,大腸閉塞では悪性新生物が多い.

麻痺性イレウスでは腹膜炎を否定してから全身疾患を考えていく.

癒着性腸閉塞は術後数年以内の発症が多いが,30年経過して発症することもある.

腸閉塞の病歴

腹部手術歴がある中高年者はリスクが高い.腹部手術歴なく,飲酒者の腹痛発作は腸閉塞の可能性が下がる.

腹痛の性状としては,腹部全体が痛み,食事で増悪/嘔吐で軽減,明らかな間欠痛であれば腸閉塞の可能性が高いが,これらがなくても可能性はさほど下がらない.

随伴症状として便秘や嘔吐があれば腸閉塞の可能性が上がるが,排ガス停止や,嘔気・食欲低下がなければ可能性は下がる.

急性腹症における腸閉塞の診断

消化管の疝痛は2/10まで改善するが,尿路結石では5/10まで,胆石では8/10までしか改善しないといわれる.

腸閉塞で放屁がないのは90%で,排便がない(81%),嘔気・嘔吐(79%)よりも高頻度に見られる症状〔World J Gastroenterol. 2007; 13: 432-7〕であり,排便だけでなく放屁の有無も必ず確認したい.

大量の水様性下痢は不完全閉塞において見られうるが,排ガスを伴わない下痢が特徴的である.

腸閉塞の身体所見

発熱があれば少なくとも単純性腸閉塞ではない.

腹部膨隆・蠕動音異常・腹部びまん性圧痛が身体所見で比較的感度が高いが,いずれも約3割の症例では見られない.

腹部が膨隆し腸管蠕動が視診上認められれば腸閉塞は確定的といえる.

聴診では蠕動音亢進・減弱の両者と音の高さなどに留意して,十分な時間をかけて所見をとる.

腹膜刺激徴候は腸閉塞の診断自体には有用ではないが,他

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