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診断

5 消化管穿孔

上部消化管穿孔

上部消化管穿孔の原因としては十二指腸潰瘍,胃潰瘍が多い.

腹痛は穿孔を起こした後2時間以内に一過性に改善することがあり,その場合バイタルサインも正常化しうるが,その場合でも腹膜刺激症状の有無は診断に有用である.

腹膜刺激症状のためわずかな体動も嫌がるが,若年男性の場合は著明な腹壁硬直のため反跳痛がはっきりしないこともある.

手術を受けた胃潰瘍における穿孔の頻度は5%であるのに対し,十二指腸潰瘍では25%と十二指腸潰瘍で穿孔しやすい.

右季肋部中腋窩線上で明瞭な鼓音があれば,同部位にfree airがある可能性が非常に高いとされる.

下部消化管穿孔の原因

小腸穿孔の原因は潰瘍よりも外傷や絞扼性イレウスが多い.大腸穿孔の原因は悪性腫瘍と特発性が多い.

便秘症の高齢者の突然の下腹部痛+腹膜炎症状では大腸穿孔を考える.

悪性腫瘍による大腸穿孔は経過が急性でないことも多く,骨盤内炎症による頻便も診断を困難にすることがある.

特発性大腸穿孔は平均73[50-86]歳に起こり,69%で慢性便秘症の既往がありS状結腸に穿孔することが多い(56%)〔J Clin Gastroenterol. 2011 Oct; 45(9): e82-6〕.

特発性S状結腸穿孔は平均63[16-87]歳で60歳以上が68%.54%で慢性便秘症の既往がある.下腹部を中心とした突然の激しい腹痛(100%)を呈するが,排便を契機に発症(30%)することもある〔World J Surg. 1981 Jan; 5(1): 125-30〕.

便塊による腸管穿孔は便秘の既往が81%,画像上は100%で便塊貯留〔Dis Colon Rectum. 2000; 43: 991-8〕を認める.死亡率は35%〔Br J Surg. 1990; 77: 1325-9〕である.

悪性腫瘍による大腸穿孔は平均7.6週間の経

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