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7 急性下痢症

急性下痢症

明確な基準はないが,2週間以内を急性,2-4週間を遷延性,4週間以上を慢性と考えるのが1つの目安である.

ほとんどの急性下痢は急性胃腸炎であり対症療法のみでよいが,消化管出血と,アナフィラキシー・ショックやトキシックショック症候群,甲状腺クリーゼ・副腎不全を見落とすと死につながる.

200g/日以上の便重量を下痢とするが,臨床的には便の性状変化や1日3回以上の排便を目安に下痢とみなされることが多い.

多くの場合急性下痢=急性胃腸炎で,急性下痢の95%以上は特別な検査や治療を必要としないが,他にも多種原因はある.

▶感染症では腸管感染症以外にレジオネラ症,HIV感染症,新型インフルエンザ,マラリアも状況に応じて考える.

▶骨盤内炎症疾患(虫垂炎・腸腰筋膿瘍)でも軟便・頻便はありうる.

▶全身疾患としては甲状腺機能亢進,副腎不全,心不全,糖尿病,膠原病,尿毒症が下痢を来しうる.

▶過食・過飲,乳糖不耐症,薬物性(下剤,ジギタリス,抗菌薬,制酸剤,テオフィリン,PPI,NSAIDs),薬物中毒,物理的要因(寒冷・放射線),心因性も下痢の多い原因である.

急性胃腸炎の診断

発熱・血便・しぶり腹(少量頻便・残便感)・激しい腹痛→大腸型で,嘔吐や大量水様便を伴う小腸型と異なり,常に細菌性腸炎を示唆する.

食中毒は食餌摂取歴・随伴症状でほとんどの症例では推定可能だが,食餌歴を1週間前まで遡ることが重要である.

▶食後6時間以内に無熱・嘔吐中心・速やかに改善→ブドウ球菌毒素型(おにぎり・弁当).

▶食後6-48時間は鑑別が多い→ノロウイルス(冬の生牡蠣),腸管ビブリオ(夏の海産物),Salmonella(鶏肉・生卵),ウェルシュ菌(給食のシチュー).

▶食後48時間〜1週間はCampylobacter(鶏肉・生卵),腸管出血性大腸炎(EHEC)(牛肉)の2つ.

▶冬季に流行する小腸型の胃腸炎は

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