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10 アニサキス症

胃アニサキス症

アニサキス症はイカやサバなどが原因として有名だが,いかなる海産物も原因となりうる.

日本では上部消化管内視鏡検査が進んでいるために胃アニサキス症が有名で,典型的には食後2-8時間後に腹部激痛で発症する.

数週間で消失する胃偽性腫瘍を呈することもある.

アニサキスは低温を好むため冷蔵はむしろアニサキスにとって好都合である.また酒や調味料ではなかなか死なない.

アニサキス症は日本人に特に多く見られ1965年以来3万例を超す報告があるが,近年その発生頻度は低下している(年間2,000-3,000例で12-3月に多い).

激症型と軽症型に分けられている.前者は過敏反応による消化管の攣縮を伴うもので,予めアニサキス抗原で感作されているか,再感染の場合であるといわれ,Ⅲ型アレルギーが主体であるとされる.


冷蔵や調味料との関係

▶最も多いA. simplexは13-18℃では3-4週間,5-7℃では6-7週間生存.60℃1分あるいは-20℃24時間程度で不活化するが,0-2℃では50日間も組織侵入力を保つ.

Pseudoterranova decipiensは20℃で8日間,5℃で52日間は育ち,17℃で6日間,5℃で140日生存するが,25℃以上では生存できないため,夏場の海産物では発生しにくく,日本では北海道での報告例が多い.

▶日本酒に浸されると50分で大半が死滅するが,胃液では20%は4時間生存し,胃液を日本酒で3倍希釈した場合も10%は240分生存する〔Hokkaido J Surg. 1969; 14: 167-71〕.

▶醤油と粉わさびに10分浸されると組織侵入能力を喪失するが,魚体内でのcystの状態では2時間浸した後でも組織侵入能力を温存している.またお酢に5時間浸されると組織侵入能力を喪失するが,1%の食酢では100日間生存可能であり〔J Osaka Ci

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