便秘の疫学
●便秘の定義は主観的なものであるが,3日に1回の排便までは正常とすることが多い.
●人口の5%で見られ,女性に2-3倍多い.
●便秘の明確な定義は実はないが,便の回数が少なくなったり硬くなったりすることで,“快便”ではない状態を指す.自称便秘の60%は毎日排便があるともされる〔Dig Dis Sci. 1987 Aug; 32(8): 841-5〕.
●重度の便秘症の70%が女性ともされるが,腹筋が弱いこと,羞恥心のため排便習慣が乱れやすいこと,胆汁酸分泌が少ないこと,黄体ホルモンは腸管蠕動運動を抑制することから月経周期に一致して排便習慣の変化しうることが原因として考えられている.
器質性便秘
●まず除外すべき器質的疾患は大腸癌と腸閉塞である.50歳以上の便秘患者では2年未満の発症・進行性増悪・体重減少・貧血・便狭小化・便潜血陽性・腹部所見に特に注意する.
●全身疾患として薬剤,代謝性疾患,神経疾患の3つを考える.
▶薬剤としては抗コリン薬,抗うつ薬,精神病薬,モルヒネ,ビンカアルカロイド,Ca拮抗薬が重要.
▶代謝性疾患としては低K血症,高Ca血症,甲状腺機能低下症が重要.
▶神経疾患としてはParkinson病や自律神経障害,馬尾症候群が重要.
機能性便秘
●便秘の多くは機能性便秘である.
●3大機能性便秘
▶ストレスで腸管が動きすぎる若年者に多い痙攣性便秘では,腹痛・兎糞・間欠的な下痢が見られる.
▶女性や高齢者に多い腸管運動の停滞した弛緩性便秘は,便意弱く,硬便で下剤乱用の傾向がある.
▶直腸内で便が停滞する直腸性便秘は,弛緩性便秘と似ており合併も多い.排便を我慢する習慣で発症し,直腸内に大量に糞便が存在するが便意を認めない.
●入院患者や旅行中では環境変化・生活変化による一過性単純性便秘がよく見られる.
●便秘の生理学
▶口から肛門までは合計9m,30-120時間の経路
□胃で2-3時間(長
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