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20 急性腸管虚血

急性腸管虚血

突然始まる激しい腹痛であるにもかかわらず腹部診察所見が軽微であれば急性腸管虚血を考える.

50歳以上で動脈硬化のリスク要因があり,激しい腹痛が2時間以上続けば造影CTの適応がある.

急性腸管虚血の1/3を占める非閉塞性腸管虚血や静脈血栓症は亜急性の経過をとりうる.

急性腹症の0.4%を占めるが,死亡率60-80%と非常に重篤な病態である.

上腸間膜動脈塞栓症(SMA塞栓症)・上腸間膜動脈血栓症(SMA血栓症)

突然発症する激しい腹痛を特徴とするSMA塞栓症は心房細動などの心疾患がリスク要因である.

SMA塞栓症では他部位における同時塞栓症が2/3で見られ,中大脳動脈領域の脳梗塞,腎梗塞,脾梗塞,下肢動脈塞栓が多い.

SMA血栓症では1/3の症例で食後に腹痛の既往(腹部アンギナ)がある.動脈硬化や低血圧,凝固能亢進がリスク要因である.

塞栓症・血栓症は上腸間膜動脈(SMA)に起こることが多い.

▶SMAは血管分岐角度と血流量の問題から塞栓症を起こしやすい.塞栓症全体の5%がSMA塞栓症とされる.

▶急性腸管虚血(血栓性・塞栓症)はSMAを侵すのが92.8%で,4.5%でSMAと下腸間膜動脈(IMA)の双方を侵す〔Zhonghua Wei Chang Wai Ke Za Zhi. 2007 Nov; 10(6): 524-7〕.


SMA塞栓症のリスク要因

▶SMA塞栓症では心疾患(91%),心筋梗塞(27%),心房細動(82%),心不全(45%)などを認めることが多い〔Ann Surg. 2001 Jun; 233(6): 801-8〕.

▶急性心筋梗塞の経過中はSMA塞栓症を起こすことがある.心筋梗塞・脳梗塞などの既往はSMA塞栓症・血栓症双方のリスク要因で,両者の鑑別には有用ではない〔Ann Surg. 2005 Mar; 241(3): 516-22〕.

非閉塞性

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