診療支援
診断

2 肝機能異常の解釈

肝細胞障害か胆道系酵素上昇パターンかの鑑別

“肝障害”は,肝細胞障害,胆道系酵素上昇,肝合成能低下の3つに分けて考えるとよい.

トランスアミナーゼ<500IU/LでALP>正常上限の3倍であれば胆道閉塞,トランスアミナーゼ>500IU/LでALP<正常上限の3倍ならば肝細胞障害パターンと考える.

ただし胆道閉塞の場合,胆道系酵素(ALP・γGTP)はトランスアミナーゼ(AST・ALT)より遅れて上昇するため,1回の採血で胆道閉塞なしとはいえない.

肝逸脱酵素(AST・ALT・LDH)上昇

ALT優位なら肝疾患だが,AST優位ならLDHとの比率で肝疾患か否か判断する.

LDH/AST比は肝炎ならば5未満となる.20までは種々の疾患でありうるが,20以上ならば血液疾患と悪性腫瘍を考える.

肝細胞内にはALTよりASTが3倍以上存在するため,一気に肝臓が崩壊するとAST/ALTは3倍となるが,半減期はALTのほうが3倍長いため,慢性肝疾患やピークアウトした急性肝障害はALT優位となる.

AST<ALTなら慢性肝炎・脂肪肝・ピークアウトした急性肝炎と予後良好だが,肝炎においてAST>ALTならば先細りで予後不良である(肝硬変・アルコール性肝障害・進行中の急性肝炎あるいは劇症肝炎).

肝逸脱酵素の中ではLDHが最も半減期が短いため,急性肝炎回復期にはLDHが最も早く改善する.

LDHのアイソザイム

▶血球・心筋はLDH1・LDH2,腎臓はLDH1-3,精巣はLDH2,肺はLDH3,筋肉と肝臓はLDH3-5がメイン.

▶LDH1からLDH5になるにつれ,半減期は短くなる.障害組織における含有量と半減期で血中濃度が決まる(慢性筋疾患ではLDH2が高値でよい).

心臓・筋肉由来はCK高値,肝臓由来はALT高値で判断できるため,LDHの単独上昇では血液疾患,悪性腫瘍,腎臓由来を考える.

運動時の

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