診療支援
診断

10 腹水

腹水の原因

臨床的には肝硬変が多いが,静水圧を上げる収縮性心外膜炎や下大静脈閉塞,他の低Alb血症などを鑑別する必要がある.

感染(化膿性・結核性)・癌性腹膜炎・膠原病の3大炎症疾患は見逃してはいけない.

消化管穿孔による細菌性腹膜炎や,急性膵炎,絞扼性イレウスなど急性腹症を呈する疾患では腹水は危険なサインである.

腹水貯留患者の病歴

肝疾患の既往があれば腹水を有する可能性が高くなる.

腹囲増大,体重増加,下腿浮腫があれば腹水を有する可能性が高くなる.下腿浮腫の既往がなければ肝硬変による腹水の存在は否定的となる.

腹水貯留患者の身体所見

視診上腹部膨隆がなく,側腹部に打診上濁音なければ腹水は否定的である.

側腹部濁音あれば,濁音境界が体位で移動することを確認すれば可能性はさらに上がる.さらに波動を触知すればほぼ確定的となる.

身体診察では少量の腹水検出は不可能であるため,腹水を否定するためには超音波に譲らねばならない.

座位や立位での恥骨上でのausculatory percussionは身体所見で最も感度が高い可能性があるが限られたデータしかない〔Indian J Med Sci. 1998 Nov; 52(11): 514-20〕.

50-200mLまでの腹水は正常でもありうる〔Ann Intern Med. 1992 Aug 1; 117(3): 215-20〕.100-200mL貯留すれば腹部エコーにて検出が可能となる.一方,身体所見による濁音境界移動や波動は腹水が1000-1500mL程度貯留しないと出現しがたい.

腹水検査

まずalbumin gradient≧1.1g/dLならば門脈圧亢進と考える.

Alb gradient<1.1g/dLならばネフローゼ症候群と,透過性が亢進する炎症性疾患(腹水中蛋白>2.5g/dLで腹水中白血球>1,000/μLが典型的

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