診療支援
診断

11 腹膜炎(消化管穿孔以外)

特発性細菌性腹膜炎(SBP)

腹水の蛋白濃度が低い肝硬変患者やネフローゼ症候群では,SBPが高頻度に起こるが,それ以外の腹水患者では稀である.

腸管からの細菌移行が重要な機序であり,起因菌としては腸内細菌群が多いが,グラム陽性連鎖球菌も重要である.

高蛋白濃度の腹水を来す心不全や悪性疾患ではSBP発症は稀であるが,肝硬変やネフローゼ症候群といった腹水中の蛋白濃度が低い疾患でSBPは起こりやすい.補体低下・オプソニン活性低下がその主因とされる.

▶小児では19%が肺炎球菌ともされる〔World J Gastroenterol. 2006 Sep 28; 12(36): 5890-2〕.

SBPの症候

腹水貯留を伴う肝硬変患者において発熱や腹部症状を訴えた場合はSBPを疑うが,高熱や激しい腹部症状を呈することはむしろ少ない.

新しい腹水や原因不明の腹水増加,脳症の増悪,肝機能障害や腎機能障害の進行,消化管出血の合併あるいは既往があれば,特にSBPを強く疑う.

SBPの検査

凝固障害が軽度であれば腹腔穿刺の安全性は高いので,臨床的にSBPが疑われた場合は必ず腹腔穿刺を行う.

腹水検査は好中球数≧250-500/μLが一番信頼性のある指標である.

腹水培養は感度を高めるために血液培養容器に10mL以上の腹水を入れる.血液培養は半数で陽性となる.

DICや出血傾向がなければ腹腔穿刺による出血合併症は1/1,000の頻度で,輸血を必要とするのはさらに1/100〔Arch Intern Med. 1986 Nov; 146(11): 2259-61/Transfusion. 1991 Feb; 31(2): 164-71〕のみであり,PT-INR=8.7や,血小板が19,000/μLでも腹腔穿刺は安全であったという報告もある〔Hepatology. 2004 Aug; 40(2): 484

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?