脾腫
●脾腫の鑑別は血液疾患,感染症,肝疾患,炎症性疾患を念頭におく.
●リンパ節腫大・巨脾または進行する脾腫・血球増多があれば血液疾患から考える.血液疾患では悪性リンパ腫・白血病がまず見逃してはならない疾患だが,溶血性貧血,真性多血症,骨髄線維症でも巨脾は見られる.
●発熱があればまず感染症を考え,次に血液疾患を考える.感染症の中では鑑別は多岐にわたるが,マラリア・感染性心内膜炎・結核・伝染性単核球症・HIV感染症は押さえておく.
●肝機能障害あれば慢性肝障害や肝硬変を考えるが,肝機能障害がなくても門脈圧亢進を来すような門脈閉塞や脾静脈塞栓症は鑑別にあげる必要がある.
●炎症性疾患にはFelty症候群(関節リウマチで脾腫と白血球減少を伴うもの)などの膠原病やアミロイドーシス,膵炎,Basedow病を含む.
●脾疾患には脾静脈血栓症・脾臓内出血・膿瘍などがあげられるが,原発・転移を問わず固形癌は稀である.
▶悪性腫瘍に罹患していた1,898例の病理解剖所見では脾臓に3.0%で転移を認めたが脾臓のみに転移を来していた症例はなかった.絶対数では肺非小細胞癌が最も多いが,脾臓転移を来しやすいのは悪性黒色腫・精巣胚細胞腫・肺小細胞癌・乳癌である〔Pathol Res Pract. 2006; 202(5): 351-6〕.
●その他にはGaucher病・Niemann-Pick病などの蓄積病があげられる.
脾腫の身体所見
●打診は感度の高いCastell法で行うが,深呼吸できない患者ではTraubeの三角を打診する.
●打診で陰性ならば脾腫はないと判断するが,打診が陽性な場合は触診で確認する必要がある(特に食後は偽陽性が多い).
●触診ではMiddleton法の感度が高く,やせている患者であれば打診を省くことができるとされる.
●肥満患者では打診も触診も感度が低くなる.
●打診
●触診
▶触診を施行するのは