急性冠動脈症候群
●言わずと知れた致死的胸痛の代表的疾患であるが,救急外来を受診したとしても2%は帰宅させられている.
●入院後24時間経過していても,血液検査・心電図検査のみでは4%が見落とされる.
●急性冠動脈症候群の2.1(1.1-3.1)%,不安定狭心症の2.3(1.3-3.2)%が救急外来から帰されている〔N Engl J Med. 2000 Apr 20; 342(16): 1163-70〕.
●急性冠動脈症候群で入院した症例のうち,血液検査(CK,CK-MB,LDH)と心電図では12時間以内に異常が見られるのは77%で,24時間経過しても4(2-5)%の症例では異常が検出できない.この検査異常が見られなかった症例の56%では24時間以内に狭心痛が見られる〔Ann Intern Med. 1987 Feb; 106(2): 181-6〕.
リスク要因
●高齢男性が典型的だが,急性冠動脈症候群の4%は40歳未満に発症する.若年者では冠攣縮性狭心症を鑑別にあげる.
●高コレステロール血症・糖尿病・高血圧,肥満,喫煙,心筋梗塞の既往がリスク要因として重要だが,「狭心症の既往」は必ずしも有用とはいえない.
●リスク要因は若年者ではとても重要だが,高齢者ではリスク要因の有無に関係なく高リスク群と心得る.
●年齢・性別
●それ以外のリスク要因
▶寝返りで10秒間世界がグルグル回る“Ménière病”,関節炎ではない膝関節痛に採血でリウマトイド因子が陽性だから“関節リウマチ”などと同様に,体をひねるとズキンと痛む胸痛にさえ“狭心症”とのレッテルを貼られている患者も多く,狭心症の既往に関しては自己申告を鵜呑みにしないほうがよい.
胸痛の性状
●心筋梗塞では今までの狭心痛よりも強い圧迫感が60分以上持続するのが典型的である.
●労作時の発症は可能性を上げるが,感度が低い(安定型狭心症の病歴聴取ほど