心タンポナーデと収縮性心膜炎
●心囊水が貯留することで起こる心タンポナーデ,心外膜が硬くなる収縮性心膜炎はpericardial compressive syndromeと呼ばれ類似点が多い.
●血行動態学的に異なる点として心タンポナーデでは奇脈が,収縮性心膜炎ではKussmaul徴候がより高頻度に認められる.
●両者の類似点としては心筋拡張障害が目立つが収縮能は保たれること,心室間相互作用(ventricular interaction)が顕著であること,頸静脈怒張が見られることである.
●心タンポナーデでは吸気で静脈還流量が増えるために右心系が左心系を圧排し心拍出量が著明に低下し奇脈を呈しやすい.
●収縮性心膜炎では硬化した心外膜で制限されているため静脈還流量は呼吸にかかわらず一定であるためにKussmaul徴候を呈する.なお収縮性心膜炎でも肺静脈圧が吸気で低下するために左室流入量が減少し,心拍出量は低下するため奇脈は生じうる.
▶Kussmaul徴候とは吸気時に起こる奇異性の頸静脈怒張のことで,吸気時の胸腔内圧の減少で起こる静脈還流の増加を収容できない状態の心臓に起こる.怒張に至らないまでも吸気時に減少しない頸静脈の拡張はKussmaul徴候といってよい.収縮性心膜炎以外には重症右心不全,拘束性心筋症,三尖弁狭窄,上大静脈症候群でも見られる.
心タンポナーデの原因
●特発性心膜炎では心タンポナーデとなることは少ないので,細菌感染,結核,悪性疾患を除外する必要がある.
●悪性疾患・結核性・細菌性心膜炎では61%で心タンポナーデとなるが,急性特発性心膜炎では14%のみである〔Heart. 2004 Mar; 90(3): 252-4〕.
心タンポナーデの病歴聴取と身体診察
●症状としては呼吸困難が最も多い.
●心タンポナーデを示唆する,唯一ともいえる信頼できる身体所見は奇脈である.
●頻脈,頻呼