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診断

9 心不全

心不全の疫学

収縮能障害は高齢者ではよく見られるが,拡張能障害はさらに高頻度である.両者とも男性は女性のほぼ2倍の頻度である.

拡張能障害単独(LVEF良好な心不全)でも予後は不良であり,重要な疾患群である.

心不全のリスク

心不全の基礎疾患としては心筋虚血,弁膜症,心筋症,高血圧が重要である.

呼吸困難の患者において,心不全・心筋梗塞・糖尿病・高血圧の既往は心不全の可能性を上げるが,肺気腫があっても心不全の可能性はわずかしか下がらない.

急性増悪のきっかけとしては食餌や薬剤へのアドヒアランス低下や急性感染症が虚血や不整脈(発作性心房細動など)よりも多い.

虚血がないのに急激な肺水腫(flash pulmonary edema)を繰り返す場合は,腎動脈狭窄症を考える.

▶甲状腺機能亢進症,高度な貧血,脚気,動静脈シャントではhyperdynamic stateから心不全や肺水腫を呈する.

▶flash pulmonary edemaは両側腎動脈狭窄によるものが多いが,これにはRAA系亢進,NO合成障害,エンドセリン高値などに関連した血管内皮障害が関与している可能性が示唆されている〔Prog Cardiovasc Dis. 2009 Nov-Dec; 52(3): 249-59〕.


心不全に対するリスク要因

心不全の病歴

呼吸困難は労作時呼吸困難→発作性夜間呼吸困難→起座呼吸と進行するのが典型的である.

起座呼吸は肺疾患でも生じうる.

体重増加は呼吸困難が出現する前に出現することが多いため,心不全の診断のみならず管理にも重要であり,心不全の既往があれば体重測定を心がけるように指導を行いたい.

救急外来を呼吸困難で受診した場合の心不全の診断

発作性夜間呼吸困難,起座呼吸

▶仰臥位では静脈還流量が増えるため,心不全が増悪し呼吸困難になると解釈されている.さらに下大静脈が右側にあ

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