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16 深部静脈血栓症

静脈血栓塞栓症の疫学

静脈血栓塞栓症(VTE)は深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓(PE)に分類される.

日本では欧米の1/10の頻度ともされていたが,人工関節置換術後のVTEは無症候性を含めると25-50%で欧米とあまり変わらないということが分かってきた.

近位部深部静脈血栓症が80%と多いが,肺塞栓の合併が問題である.一方腓腹筋部の深部静脈血栓症では肺塞栓合併は稀である.

症候性の近位部深部静脈血栓症の40-50%で無症候性肺塞栓を併発している.適切な治療を行うことで致死的な肺塞栓を1%以下にすることができる.

静脈血栓塞栓症のリスク要因

90%の症例では最近のADL制限の既往がある.

それ以外のリスク要因としては高齢,男性,妊婦,ホルモン療法,肥満,心不全,ネフローゼ症候群があげられるが,深部静脈血栓症を契機に発見されうる疾患として悪性腫瘍や先天性凝固阻害因子欠損症,抗リン脂質抗体症候群が重要である.

血液疾患では真性多血症・本態性血小板増多症・発作性夜間血色素尿症・多発性骨髄腫・白血病といった疾患が血栓症のリスクとなる他に,炎症性腸疾患も静脈血栓塞栓症のリスク要因として重要である.

悪性腫瘍と静脈血栓塞栓症

悪性腫瘍は種類を問わず静脈血栓塞栓症のリスクとなるが,中でも血液腫瘍,肺癌,消化管癌はリスクが高い.

転移があることと,悪性疾患診断から1年以内であることは,静脈血栓塞栓症のリスクを特に高くする.

静脈血栓症の7.6%で18か月以内に悪性腫瘍の診断がつくとされる.静脈血栓症の再発を繰り返す場合,悪性腫瘍発生率は17%と高い.

先天性凝固阻害因子欠損症,抗リン脂質抗体症候群

特に誘因のない再発性の静脈血栓塞栓症,下肢以外の部位の静脈血栓塞栓症がある場合は先天性凝固阻害因子欠損症や抗リン脂質抗体症候群を強く疑う.

50歳未満での発症や家族歴があれば先天性凝固阻害因子

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