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17 肺塞栓症

肺塞栓症のリスク

90%以上は下肢近位部深部静脈血栓からの塞栓症である.

静脈血栓症の既往と,悪性腫瘍の存在,最近1か月のベッド上安静・手術がリスク要因として特に重要である.

肺疾患・心血管系疾患の既往や喫煙歴があれば,肺塞栓症以外の心肺疾患の可能性が高くなる.

肺塞栓症のリスク要因

肺塞栓症の病歴

突然の呼吸困難が肺塞栓の診断に最も重要であるが,失神感,喀血,下肢腫脹(下肢深部静脈血栓症を示唆)も肺塞栓症の可能性を高くする.

胸膜痛,微熱,胸水貯留から胸膜炎との鑑別が問題となることもある.

65%が胸痛もしくは喀血で受診する.呼吸困難のみは22%で,8%は循環虚脱で受診する〔Chest. 1991 Sep; 100(3): 598-603〕.

カナダの救急外来を受診した胸膜痛患者の21%が肺塞栓症であったという報告がある〔Arch Intern Med. 1988 Apr; 148(4): 838-44〕.

肺塞栓症の症状

肺塞栓症の身体所見

頻呼吸が最もよく見られるバイタルの異常で,低血圧が最も肺塞栓症を疑うバイタルの異常である.

発熱は認めてもよいが高熱は稀である.

頸静脈怒張,ⅡP亢進,右室拍動はあれば右心系負荷所見として重要である.

片側性の下肢腫脹があれば肺塞栓の可能性は高くなるため,下肢の診察も省いてはならない.

wheezeが聞こえれば肺塞栓症の可能性は低くなるが,cracklesや胸壁圧痛があっても肺塞栓を否定してはならない.

通常Ⅱ音はⅡA→ⅡPの順に聞こえる.肺高血圧になるとⅡ音の分裂は広くなりⅡP成分が亢進する.通常はⅡPを聴取できない心尖部でⅡP(すなわちⅡ音の分裂)を聴取すればⅡP亢進と考えてよい.

肺塞栓症の胸部単純X線写真

呼吸状態に比べて胸部単純X線写真にて肺野が正常であることが肺塞栓症を疑う理由となる.

肺血管陰影途絶・減弱,末梢を底辺

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