開発途上国からの帰国後発熱
●マラリアは特にアフリカ帰りでは圧倒的に多い疾患である.
●デング熱は2番目に多い疾患で特に東南アジア帰りでは最も多い.
●腸チフスは南・中央アジア帰りで多い疾患である.
●潜伏期が3週間以内の場合は腸チフス・デング熱・Rickettsia感染を考え,3週間以上では結核・A型肝炎を考える.マラリアはいずれでもありうる.
●マラリア,デング熱,腸チフスのいずれの疾患も呼吸器症状や消化管症状を伴うことも伴わないこともある.
●マラリア,デング熱,伝染性単核球症では肝脾腫,異型リンパ球を認めうるが,腸チフスでは異型リンパ球は出現せず白血球数は減少することが多い.
●上記疾患のうち異型リンパ球の報告があるのは伝染性単核球症の他にマラリアとデング熱,Rickettsiaの中ではエーリキア症とツツガ虫病だけである.
マラリア
●流行地域への渡航歴が1か月以内にある発熱患者では,蚊刺症の有無を確認する.
●熱帯熱マラリアは連日の発熱を呈しうるので熱型による除外診断はできない.
●発熱,頭痛が最も高頻度に認められる症状であるが,消化管症状や呼吸器症状もしばしば認められる.
●肝脾腫,黄疸,眼瞼結膜蒼白は特異度の高い所見である.
●皮疹やリンパ節腫脹,関節炎があればマラリアは否定的である.
●診断には末梢血スメアが感度95%で最も重要である.
●旅行者のマラリア
▶重症なマラリア200例のうち30%で肺病変が認められ,咳(24%),呼吸困難(12%),肺炎(1.5%),ARDS(7%)の存在はマラリアを否定的にするものではない〔J Vector Borne Dis. 2011 Dec; 48(4): 219-23〕.
●末梢血スメア
▶1度陰性でも疑いが高い場合は6-12時間ごとに48時間(数回)検査することが勧められる.
▶1つの赤血球内に多数の輪状体が見られたり,バナナのような形の生殖母体が