呼吸困難の鑑別診断
●呼吸困難の原因は心疾患と肺疾患が多いが,上気道閉塞,神経筋疾患,労作時ならさらに貧血も考える必要がある.
●中年以降では特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)と心不全が増加する.
●COPDの中でも毎年3か月以上の痰排出が2年以上連続で見られる場合は慢性気管支炎と考えるが,ここではおもに日本人に多い肺気腫について扱う.
▶慢性気管支炎では気道に痰がからんでいるので主訴は咳・痰であり,吸気早期のラ音を聴取することが多い.肺気腫と比較して気管短縮や胸郭変形などの徴候は伴いがたいが,1秒量の割に酸素化は悪く肺性心を伴いやすい.
●COPDは肺に限局した疾患ではなく,炎症・サイトカインなど全身性のプロセスを伴い低栄養に陥る重篤な疾患である.
COPDの病歴
●COPDは高齢・男性・喫煙者の慢性咳嗽や呼吸困難を訴える症例では高頻度に見られる.
●40-50歳未満や非喫煙者におけるCOPDは非常に稀である.
●COPDと年齢
●COPDの診断
▶喫煙とCOPD
□喫煙者では1秒量は60-100mL/年,非喫煙者は25-50mL/年で低下する.禁煙した時点から肺機能低下速度は非喫煙者と同等まで戻るが,減煙では効果は期待できない〔Eur Respir J. 2005 Jun; 25(6): 1011-7〕.
□60歳以上の咳を伴う喫煙者は48%がCOPDである〔BMJ. 2002 Jun 8; 324(7350): 1370〕.
□日本ではα1アンチトリプシン欠損症患者は非常に稀であり,喫煙歴がないCOPDはまず受動喫煙を考える.
COPDの身体所見
●肺胞呼吸音低下,打診上過共鳴音,心濁音界縮小あるいは消失,気管短縮,Hoover徴候,心窩部心尖拍動はいずれも特異度の高い所見である.
●口元に放散する吸気早期のcracklesは高度の末梢気道閉塞病変を示唆する.
●COPDの診断
▶樽状胸:前後径/