胸水の身体所見
●呼吸音が低下していれば,声音振盪が低下(胸水や気胸)しているか亢進(肺実質充満病変)しているかを確認する.
●声音振盪が低下している場合は打診で胸水(濁音)と気胸(鼓音)を鑑別する.
●聴性打診は少量の胸水も検出しうる有用な方法である.
●胸水貯留のみでは低O2血症を来すことは少なく,心不全や肺炎,無気肺の合併を考える.
●胸水に対する身体所見(立位PA胸部単純写真との比較)
▶聴性打診(auscultatory percussion)
□第12肋骨先端の3cm尾側,背部鎖骨中線上に聴診器を置く.肺尖部から尾側へ向かっていくつかのレベルで打診する.
□第12肋骨よりも頭側で突然dullからloudになる水平面を認めれば胸水があると考える.
□50mLの胸水でも陽性となりうる〔J Gen Intern Med. 1994 Feb; 9(2): 71-4〕.
▶ヤギ音は胸水による肺の虚脱を反映しており少量の胸水では陽性とならない.また診断特性に対するデータも乏しい〔Cleve Clin J Med. 2008 Apr; 75(4): 297-303〕.
▶呼吸音が減弱した側の胸郭が拡大していれば胸水や気胸を疑い,縮小していれば無気肺を考える.
胸水の画像診断
●胸部単純X線写真による胸水の検出感度は,側臥位正面像>側面立位像(50mL)>正面立位像(200mL)の順番である.
●仰臥位X線写真では肋骨横隔膜角の鈍化だけではなく片側透過性低下や横隔膜の不鮮明化も組み合わせ,検出感度を高める必要がある.
●超音波検査は胸部単純X線写真よりも感度が高く,生理的な胸水を検出することすらある.
●胸部立位単純X線写真と胸水
▶透過性低下病変があっても心臓,横隔膜,大動脈,胸膜の辺縁が鮮明なら,胸膜腔を自由に移動できる胸水ではない可能性が高い.
□稀に見られる肺下胸水の場合は偽横隔膜が肺野と明瞭な辺縁を