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2 認知症

認知症の疫学

認知症とは記憶障害に失語や失行・失認などの高次脳機能障害を伴う病態で,日常生活に支障を呈する状態を指す.

85歳以上の40%で認知症を認める.

認知症ではないが,認知症と間違えられやすい疾患

記憶力の低下を自覚しており日常生活が営めていれば生理的な老化による物忘れ(良性健忘)と考えるが,この場合は認知症を発症するリスクが高い.

急激に認知機能の低下が見られた場合や,不眠・食欲低下を伴っていれば認知症以外を考える.

認知症では分からないこと自体を認めようとせず,弁解したり誤った答えをすることが多い.自己の能力低下を悲観したり,「分からない」と答える場合にはうつ病や甲状腺機能低下症を考える必要がある.

急性発症で変動あり(夜間に強い),注意力が低下しており,分裂した思考や幻覚・意識変容があればせん妄を考える.

認知症がなくても記憶力の低下の自覚があれば15%,自覚がなければ6%の高齢者(平均75歳)が5年以内に認知症を発症する〔J Am Geriatr Soc. 2004 Dec; 52(12): 2045-51〕.

せん妄の診断(以下の1-3を満たす)

1.急性発症で変動がある.

2.注意力が低下している.

3.分裂した思考,幻覚・意識変容がある.

認知症の診断

スクリーニングする方法としては3項目の記憶,時計描画,serial 7sが有用である.

改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やmini mental state examination(MMSE)が定量的な指標として汎用される.

スクリーニング方法

▶3項目の記憶は桜・猫・電車や,身近にあるものの3つを記憶してもらい,別のタスクをさせた後で想起してもらう.

▶時計描画は○の中に12までの数字を書いてもらい,その後11時10分を示す時計の針を書いてもらう.

▶serial 7sは100から7を順に引き算して

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