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5 慢性硬膜下血腫

慢性硬膜下血腫の症候

中年〜高齢者において亜急的に進行する意識障害や精神症状,頭蓋内圧亢進症状(頭痛・嘔吐),神経症状(歩行障害・片麻痺)で発症することが多いが,これらがすべて揃うことはむしろ少なく,1つでもあれば疑わなければならない.

3週間〜3か月前に軽微な外傷歴が先行するが,1/3の症例では外傷歴が明らかでない.

身体所見では聴性打診の有用性が期待される.

罹患率は1.72/10万人年であるが,70歳代では7.35/10万人年〔Acta Neurochir(Wien). 1975; 32(3-4): 247-50〕.

男性が71.8%を占める.平均年齢は男性で63.0±15.3歳,女性で71.3±14.2歳〔Neurol Med Chir(Tokyo). 2001 Aug; 41(8): 371-81〕.

▶現在の日本では高齢社会に基づき,次表よりも高齢者に多い分布であると考えられる.

一般的に外傷後3週間〜3か月程度で出現する場合を慢性硬膜下血腫と呼ぶ.脳萎縮などにより架橋静脈が伸展されている状態でわずかな外傷を契機に出血することが多い.

認知機能が正常な高齢者でも3か月後には30%が転倒の既往を覚えておらず,50%は目撃情報もない〔Postgrad Med J. 1997 Oct; 73(864): 635-9〕ことから,頭部外傷歴が聴取できなくても慢性硬膜下血腫は考えなければならない.

アルコール依存症や抗凝固療法はリスクとしてあげられる.

聴性打診

▶頭蓋内腫瘤の検出において聴性打診は非常に有効である可能性がある.

▶前頭洞に一致する部位に聴診器をあてて,左右の頭蓋を打診していく.

▶打診にて濁音で,減弱していれば腫瘤(血腫)があると判断する.

慢性硬膜下血腫の検査

CTにおいて脳組織と等吸収値を示す硬膜下血腫であることが30%近くあり,その場合は脳溝消失や大脳

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