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12 ウェルニッケ脳症,他

Wernicke脳症の臨床所見

古典的3徴(外眼筋麻痺,失調性歩行,意識障害)のすべては揃わないことのほうが多い.

食餌不摂生,眼球運動異常(眼振・外眼筋運動障害),小脳失調,意識変容あるいは軽度記憶障害のうち2項目以上あればWernicke脳症を疑う.

痙攣や末梢神経障害,高心拍出性心不全といった脚気の症候が見られることもある.低体温も起こりうる.

▶経口摂取不足のみならず,上部消化管手術後〔Arch Neurol. 2006 Jul; 63(7): 1026-7〕や,ビタミンB1の尿中排泄を促進する利尿剤投与〔Am J Med. 1991 Aug; 91(2): 151-5〕はビタミンB1欠乏症のリスクである.

▶視床下部が障害され,低体温が起こる〔Jpn J Pharmacol. 1990 Nov; 54(3): 339-43〕.

ビタミンB1を100mg投与し1-6時間以内に症状が改善することは診断的価値があるとされるが,眼球運動が改善しても意識障害の改善は遅れることもあることに注意を要する.

一般健診患者において血中ビタミンB1<20ng/mLとなるのは2-3%のみであり〔Trace Nurtients Research. 2004; 23: 124-7〕,ビタミンB1<20ng/mLならばビタミンB1欠乏症の可能性が高いと考えられる.一方ビタミンB1が21-27ng/mLであってもWernicke脳症発症の報告があり〔臨床化学.1977;26:210-4〕,ビタミンB1欠乏症を否定するにはビタミンB1≧28ng/mLが必要である.

Wernicke脳症のMRI所見

T2強調画像やFLAIR法,拡散強調画像で視床・視床下部の脳室周囲や中脳水道周囲に認める高信号域はWernicke脳症に特異的な所見である.

乳頭体萎縮もWernicke脳症で見られる特異的な所見である

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