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14 顔面神経麻痺

顔面神経麻痺の症候

表情筋の障害で前額部の皺よせ不能,眼瞼閉鎖不全(以上末梢性のみ),鼻唇溝消失,口角下垂,流涎が出現する.

顔面・後耳介・咽頭の異常感覚や痛みは高頻度に見られる.

味覚障害,聴覚過敏,涙液分泌異常も認められることがある.

眼瞼閉鎖不全の徴候の1つとして眼裂が閉鎖しなくても眼瞼を閉じようとすると眼球が上転するBell現象が見られる.眼瞼閉鎖不全に加え涙液が減少することで角膜炎を来しやすい.

麻痺側の舌前方2/3の味覚消失・唾液分泌障害(鼓索神経の障害),聴覚過敏(アブミ骨筋への分枝障害),涙腺分泌障害が見られることがある.

▶涙液は基礎分泌が減少していても,刺激への反射性分泌は残存し,眼瞼運動異常により涙管へ正常に涙液が排出されないため,涙液が増加していると感じることが多い.

顔面神経麻痺の原因

楽しくて反射的に笑うときには麻痺が改善する場合(随意運動と情動による運動では関与する中枢神経が異なる)は皮質性,他の神経徴候を伴う場合は皮質から脳幹までの原因を考え画像評価をする.

前額部を含めた一側性顔面神経麻痺であれば末梢性神経麻痺と考えられる.

急性の末梢性顔面神経麻痺では特発性のBell麻痺が最も多い.

重度の疼痛や,耳道や咽頭の水疱があれば帯状疱疹ウイルスによるRamsay Hunt症候群と考える.

緩徐進行(3週間以上増悪,6か月間改善がない場合)ならば真珠腫,耳下腺腫瘍を考える.

両側性ではサルコイドーシス,ライム病,Guillain-Barré症候群を考える.

中枢性顔面神経麻痺の原因としては脳梗塞,腫瘍,多発性硬化症を考える.


Bell麻痺

▶頻度は15-30/10万人年〔Am Fam Physician. 2007 Oct 1; 76(7): 997-1002〕.

▶40歳以下に多いがいかなる年齢でも起こる.男女差はないが妊婦(45/10万人年)と糖

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