診療支援
治療

腹痛を伴う皮膚疾患
Skin diseases associated with abdominal pain
調 裕次
(第二大阪警察病院部長)

【腹痛とは】腹部領域に感じる疼痛のことで消化器疾患に関連した疼痛が主であるが,下記のような種々の内臓臓器,その他の関連疼痛が認められる.

【皮膚疾患に伴う腹痛の原因】(1)消化器関連疼痛(主に食道・胃腸),(2)内臓関連疼痛(心・肝・胆・膵・腎・婦人科・泌尿器科疾患),(3)循環障害関連疼痛(血管炎,血栓・塞栓症),(4)神経因性疼痛,(5)物理的圧迫・刺激に伴う疼痛,(6)皮膚症状関連疼痛(皮膚の炎症,瘙痒,脆弱など),(7)その他(心因性・原因不明)などに分類され複合的に生じる.原因の分類(1)~(7)は表1-16に掲載.

【腹痛を伴う皮膚疾患をみたら】以下のような腹痛の原因や皮膚疾患を考慮する(表1-16)①血管炎・血栓塞栓症:IgA血管炎(アナフィラクトイド紫斑)では感染症などを契機に下肢の点状紫斑(palpable purpura)を生じ,同部の生検でIgA型のLCV(好中球破砕性血管炎)を認めるが,消化管においても同様の病態を呈し腹痛の早期診断に皮疹の評価が重要となる.その他,結節性多発動脈炎などの血管炎症候群,Degos病,コレステロール塞栓症,抗リン脂質抗体症候群などの血栓・塞栓症でも腹痛を認めることがある.②膠原病・類縁疾患:全身性強皮症では皮膚同様に消化管の線維化に伴い胃食道逆流症や腸管囊腫様気腫症,便通異常などにより腹痛その他の消化器症状を認める.他の膠原病においても,ループス血管炎やSjögren症候群における膵炎など消化器症状は多様であるが,皮膚症状とは必ずしも併行しない.Sweet病,壊疽性膿皮症などの好中球性皮膚症では潰瘍性大腸炎やCrohn病などの炎症性腸疾患を合併しやすい.腸管型Behçet病では回盲部を中心に腸管潰瘍,穿孔などをきたし腹痛・下痢・下血を認める.③蕁麻疹・紅斑症・湿疹皮膚炎群:蕁麻疹や血管性浮腫では皮膚や口腔粘膜同様に

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