【虫刺症とは】虫刺症(虫刺性皮膚炎)は,カ,ブユ,ノミ,トコジラミ,ダニ,ハチ,ムカデ,ケムシなどの有害節足動物の吸血・刺咬・接触によって生じる皮膚炎の総称である.そのなかで,吸血性節足動物による皮膚炎を狭義の虫刺症とする場合もある.発症機序は皮膚に侵入する唾液腺成分や毒成分によって生じる刺激性,あるいはアレルギー性の炎症反応である.アレルギー反応の場合は主に即時型と遅延型に分けられるが,個々の感作状態の違いによって臨床症状の現れ方に個人差がある.
【虫刺症を見たら】虫刺症の多くは瘙痒を伴う紅色丘疹が孤立性に認められる臨床像を示す.しかしノミ刺症では水疱を形成しやすく,伝染性膿痂疹や天疱瘡,類天疱瘡などの水疱性疾患との鑑別が重要である.ブユ刺症やイラガ類の毒棘による皮膚炎で,刺咬後に強い腫脹を生じる場合は蜂窩織炎との鑑別が必要になる.ドクガ類の幼虫による皮膚炎では帯状疱疹や中毒疹などの初期像と類似する場合がある.
それ以外に下記疾患の続発に注意する.①アナフィラキシーショック:ハチ刺症やムカデ咬症に引き続いて,強い即時型アレルギー反応を生じる場合があり,重篤な場合はショックに陥って生命の危険を伴うので注意が必要である.②伝染性膿痂疹:カ刺症やノミ刺症などによる瘙痒性皮疹を搔破することで二次感染を生じ,伝染性膿痂疹を発症する場合がある.③慢性痒疹:ブユ刺症で生じた瘙痒性皮疹を搔破し続けるうちに難治性の丘疹,結節を形成し,慢性痒疹となることがある.④蚊刺過敏症:カ刺症に伴って高熱や肝脾腫を生じ,吸血部位には水疱や血疱を形成した後に潰瘍化して,瘢痕を生じる場合は蚊刺過敏症と呼ばれ,慢性活動性EBウイルス感染症による特殊な病態である.本症では悪性リンパ腫や悪性組織球症に進展し,予後不良となることがある.⑤ダニ媒介性感染症:野外性のダニ類(マダニ,ツツガムシ)の吸着後にライム病,日本紅