診療支援
治療

陰部に多い疾患
Diseases in genital regions
猪爪 隆史
(千葉大学講師)

【陰部に多い疾患とは】陰部には生殖器,排泄孔とそれらを囲む粘膜が存在し,周囲皮膚にはアポクリン汗腺が豊富である.そのため,性感染症や日和見感染が多い.また全身性疾患の1症状として粘膜病変が出現することもある.さらに粘膜扁平上皮やアポクリン汗腺などから発生する腫瘍性病変も念頭におく必要がある.

【陰部に皮疹,粘膜疹をみたら】皮疹の性状,数,分布を観察すると同時に,前述の陰部に特有の特徴から,排尿排便の状況,性感染症の感染機会,随伴する全身症状を慎重に問診する.一方で,陰茎真珠腫様丘疹や腟前庭乳頭腫症などの生理的な状態との鑑別も重要である.

□鑑別のポイント‍ 

1.病歴による鑑別

 下痢や尿失禁が続いているようであれば1次刺激性接触皮膚炎や粘膜カンジダ症などを,性感染症を疑う病歴があれば単純疱疹,硬性下疳,扁平コンジローマ,軟性下疳,尖圭コンジローマ,Bowen様丘疹症,などを想起する.陰囊を含む全身皮膚に瘙痒性丘疹が多発していれば疥癬を,陰部潰瘍のほかに口腔粘膜再発性アフタ,下肢の結節性紅斑,ぶどう膜炎などが併発していればBehçet病を念頭におく.

2.皮疹の症状,性状による鑑別(表1-28)

1)びらん,潰瘍,湿潤性局面

①単純疱疹:陰部粘膜や粘膜周囲に有痛性の小水疱が多発,集簇する.再発を繰り返す.性行為による感染が多い.②硬性下疳(Ⅰ期梅毒):亀頭,包皮,陰唇などに生じる無症状,中央が自潰する硬い丘疹.無痛性鼠径リンパ節腫脹を伴う.③扁平コンジローマ(Ⅱ期梅毒):亀頭,包皮,陰唇,肛門周囲などに生じる湿潤,浸軟した扁平隆起性丘疹.④軟性下疳:亀頭,包皮,陰唇などに生じる有痛性,中央が膿疱,潰瘍化する紅色丘疹.⑤Behçet病:陰囊,陰唇などに有痛性,ダイズ大,境界明瞭な深い潰瘍が生じる.口腔粘膜再発性アフタ,下肢の結節性紅斑,ぶどう膜炎などが併発する.

2)瘙痒を伴う紅斑,丘疹

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