診療支援
治療

手掌に紅斑を生じる疾患
Erythema in the palm
小澤 健太郎
(大阪医療センター科長)

【手掌の紅斑とは】手掌の皮膚が紅色を呈する状態であり,真皮の毛細血管や小動脈の拡張を反映するため,圧迫により消退するのが特徴である.手掌は解剖学的に動静脈シャントが多い部位であり,さまざまな原因による血管拡張が目立ちやすい.色調の変化のみにとどまる場合もあるが,疾患によっては浮腫を伴って隆起したり,角化,鱗屑や痂皮を伴うこともある.母指球部や小指球部に限局してびまん性紅斑をきたす状態を手掌紅斑とよぶが,単一の疾患というよりは多病因性の症候であり,手掌に紅斑を生じるデルマドロームと考えることができる.

【手掌の紅斑をみたら】次の病態・疾患に留意する(表1-33)①湿疹皮膚炎:接触皮膚炎,アトピー性皮膚炎など.②炎症性角化症:毛孔性紅色粃糠疹,掌蹠膿疱症が代表的.乾癬や扁平苔癬でも手掌に病変がみられることがある.③紅斑症:多形紅斑は四肢伸側に好発し,通常は手背にみられるが,手掌優位に出現することがある(反対型).④膠原病:全身性エリテマトーデス(SLE),皮膚筋炎では手掌に病変が及ぶことがある.手掌紅斑は関節リウマチやSjögren症候群でもみられる.⑤自己免疫性水疱症:水疱性類天疱瘡は手掌から発症することがある.⑥感染症:梅毒は近年増加傾向であり,痒みなど自覚症状を伴わないのが特徴である.ウイルス感染症でも手掌に皮疹を生じる.⑦薬疹:固定薬疹や手足症候群など.痛みを伴うことが多い.⑧その他:手掌紅斑では全身性疾患の存在に注意する(表1-34)

□鑑別のポイント 上記の疾患を念頭に薬剤歴や既往歴などを含めた問診をとりながら,以下のポイントに注意する.①自覚症状:痛みや痒みを伴うか.②性状:平坦な紅斑のみか,浮腫や角質肥厚,鱗屑,痂皮,水疱,膿疱などを伴うか.③分布:他の部位にも診断の手掛かりとなる皮疹が存在するか.④全身症状:発熱,倦怠感,関節痛などがあれば膠原病やウイルス

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?