診療支援
治療

主な免疫組織化学染色
Immunohistochemistry
山元 修
(鳥取大学教授)

【概説】免疫組織化学的手法は,抗原抗体反応というきわめて特異的な反応を利用して,抗原蛋白の局在を明らかにする方法で,蛍光抗体法と酵素抗体法があるが,ここでは後者のみ解説する.酵素抗体法は,ある特殊な酵素によって抗体を標識し,その酵素によって発色する物質を反応させることで,対象抗原を可視化させる.通常抗原特異的な1次抗体に,標識化した2次抗体を反応させる系が用いられる.1次抗体は,かつてはホルマリン固定パラフィン包埋切片上では用いることができないものもかなりあったが,現在ではそれが可能なものが数多く市販されている.なお,ホルマリン固定による蛋白の架橋の影響で対象抗原がマスクされることがあり,その場合は標本の賦活化(加熱処理,蛋白分解酵素処理など)が必要である.


検査の進め方

 目的とする生体内蛋白に応じて,適宜特異的1次抗体を選択する.皮膚科領域で用いられる主な免疫組織化学染色について,表2-14表2-15表2-16にまとめた.

 本法を行う際,事前に当該1次抗体が何を認識するのかを正確に把握しておく必要がある.例えばCD68は組織球/マクロファージのマーカーとされるが,CD68は多くの正常細胞や腫瘍細胞がもつライソゾームに存在する蛋白であり,顆粒細胞腫や,豊富なライソゾームを有したときのメラノーマでも陽性になる.すなわち,CD68は組織球系のマーカーであるという教科書的な文言に惑わされず,ライソゾームのマーカーである,ということを理解しておくべきである.

 抗体のなかには,当初はある特定の細胞や組織に特異性が高いといわれていたにもかかわらず,S100蛋白のように,徐々にさまざまな組織に染まることが報告されてきたものがあり,所見の解釈に注意が必要である.抗癌胎児性抗原(CEA)に対する抗体にはモノクローナルとポリクローナルの2種があるが,前者は汗腺など腺細胞に特異度が高い

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