診療支援
治療

分子生物学的検査法
Clinical molecular biology examinations
久保 亮治
(神戸大学教授)

 皮膚科領域で用いられる分子生物学的検査法について紹介する.主に,腫瘍性疾患の診断,遺伝性疾患の診断に用いられる.検査の原理と限界を知ることが,診断と治療戦略立案のために不可欠である.


Ⅰ 遺伝子再構成検査

【概説】B細胞またはT細胞のモノクローナルな増殖の有無を調べる方法であり,腫瘍性増殖なのか反応性増殖なのかの鑑別に用いられる.ただし反応性増殖であっても,ある程度のモノクローナルな増殖(例えば,何らかの特異的な抗原に対する抗体を産生する特定のB細胞クローンの偏った増殖など)がみられることがある.また,腫瘍組織には腫瘍免疫が働くため腫瘍細胞以外のT細胞,B細胞も多数存在しており,それらが混在したサンプルを検査していることを念頭におく必要がある.検査結果は臨床像と併せて総合的に判断しなければならない.

【検査の原理】B細胞,T細胞はそれぞれ,免疫グロブリン,T細胞受容体の遺伝子をゲノムDNAレベルで組み換える.細胞ごとに独自の免疫グロブリンまたはT細胞受容体をコードするゲノムDNA配列をもつ.本検査では,特定の免疫グロブリン/T細胞受容体をもつB細胞/T細胞が偏って極端に増殖していないかを調べる.具体的には,ゲノムDNAを制限酵素で切断し,出てきた断片の大きさを調べるサザンブロット法(通常はさまざまな大きさの断片のスメアとなるが,1種類の細胞が増えていた場合,ある特定の長さの断片が強く検出される),PCRを用いて特定のゲノム領域を増幅し,その長さや塩基の違いを検出するPCR法がある.


検査の進め方

 サザンブロット法には,生検体が必要であり,また必要なサンプル量も多い.感度は低いが特異度は高い.PCR法は少ない検体やパラフィンブロックから抽出したDNAでも施行可能であり,感度が高い.ただし偽陽性に注意する必要がある.いずれにしても,腫瘍性増殖であるかどうかの診断には,臨床像と病理組織

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