診療支援
治療

免疫抑制外用薬(局所カルシニューリン阻害薬)
Topical immunomodulator
井川 健
(獨協医科大学主任教授)

【概説】免疫抑制外用薬は,アトピー性皮膚炎における治療において皮膚の炎症を鎮静させる目的で使われる外用薬として,ステロイド外用薬とともに広くその効果が認識されている薬剤である.日本では,タクロリムス含有軟膏が使用されており,0.1%濃度の成人用と0.03%濃度の小児用の各軟膏が利用可能である.

【適応】アトピー性皮膚炎の顔面紅斑を主たる標的として使用されているタクロリムス含有軟膏であるが,アトピー性皮膚炎以外にも,適応外使用ではあるものの,さまざまな皮膚疾患における治療効果が広く認識されており,今や皮膚科外用療法に欠かすことのできない薬剤となっている.

【薬剤の概要】タクロリムスは,筑波山中の土壌より得られた放線菌Streptomyces tsukubaensisの代謝産物より見出された,マクロライド骨格を有する化合物であり,免疫抑制作用をもっている.その免疫抑制の機序は,シクロスポリンのそれと類似しており,細胞質内の蛋白質(FK506 binding protein)と結合して複合体を作り,この複合体が,カルシニューリンという細胞の活性化に重要な役割を果たす脱リン酸化酵素の活性化を阻害することによってなされる.このタクロリムスを外用薬として利用することが検討され,1999年にアトピー性皮膚炎に適応をもつ外用薬として使用開始されるようになった.タクロリムス(水和物)は分子量がある程度大きいため(分子量822),バリア機能の低下した皮膚局所(=病変部)においてはよく吸収されるが,炎症が鎮静化し,バリア機能が正常化してくると吸収されにくくなると考えられる.このことは,「効かせたいときにだけ効かせられる」という,外用薬として理想的な側面でもある.

【使用方法】適応疾患であるアトピー性皮膚炎に対する本軟膏の使い方について詳述する.使用上限量が定められており,その量を基本において治療

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?