診療支援
治療

抗腫瘍薬
Antineoplastic agents
藤澤 康弘
(筑波大学准教授)

【概説】これまで皮膚癌の領域における薬物療法は後ろ向きの症例集積研究レベルのエビデンスしかない治療がほとんどだった.近年,免疫チェックポイント阻害薬や低分子化合物の登場により悪性黒色腫やMerkel細胞癌の治療が大きく進歩した.


Ⅰ 免疫チェックポイント阻害薬

【概説】免疫チェックポイント阻害薬はCTLA-4やPD-1を介した抑制機構を抑制することで,免疫を活性化させる.現在,本邦で皮膚癌領域において使用可能な免疫チェックポイント阻害薬は抗CTLA-4抗体のイピリムマブ,抗PD-1抗体のニボルマブとペムブロリズマブ,抗PD-L1抗体のアベルマブがある(表3-22)免疫チェックポイント阻害薬の有事事象はこれまでの殺細胞性抗癌剤と異なり,免疫の過剰な活性化による自己免疫に起因することから免疫関連有害事象とよばれる.多くがステロイド投与によりコントロール可能であるが,重篤化した場合はインフリキシマブやミコフェノール酸モフェチルなどが必要な症例もある.内分泌系の副作用は一生涯ホルモン補充治療が必要となることに留意する必要がある.

a.イピリムマブ

【適応】進行期悪性黒色腫.

【使用方法】1回3mg/kgを3週間隔で4回点滴静注.

【副作用】大腸炎,間質性肺炎,肝機能障害,下垂体炎,副腎機能低下など.

□患者説明のポイント 抗PD-1抗体治療より奏効率が低く,有害事象も多い.特にニボルマブ投与歴がある症例では,奏効率が低いだけでなく有害事象が増強する.現在はセカンドライン以降として用いられる.

b.ニボルマブ

【適応】進行期悪性黒色腫および悪性黒色腫の術後補助療法.

【使用方法】1回240mgを2週間隔で点滴静注.

【副作用】甲状腺機能異常,間質性肺炎,1型糖尿病,下垂体炎,副腎機能低下など.

□患者説明のポイント 比較的安全に使用できる薬剤ではあるが,特に術後補助療法の場合は永続的な副作用が出

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