診療支援
治療

生物学的製剤
Biologics
多田 弥生
(帝京大学主任教授)

【概説】生物学的製剤とは,最新のバイオテクノロジーを用いて,生物が産生する蛋白質を医薬品として使用するものである.皮膚科で使用されている生物学的製剤は主に抗体製剤である.乾癬ではTNF-α,IL-12/23p40,IL-23p19,IL-17Aをターゲットとする抗体製剤が10種類あり,このうちIL-23p19抗体のグセルクマブは掌蹠膿疱症にも適応がある.アトピー性皮膚炎ではIL-4受容体α抗体であるデュピルマブ,蕁麻疹ではIgEに対する抗体オマリズマブがある.薬剤の種類,使用方法については,表3-25を参照されたい(本表にないチルドラキズマブについては,別途添付文書を参照のこと).いずれも既存治療抵抗性の難治例が適応となる.低分子化合物と異なり,腎障害や肝障害などを有する患者にも投与でき,薬剤相互作用も問題にならない.一方で,投与部位反応や蕁麻疹の出現などの注射時反応,抗薬剤抗体の出現による時間経過に伴う効果減弱など,生物学的製剤特有の副作用を認めうる.薬剤によっては使用指針が定められており,それに従って使用する必要がある.

【適応】①乾癬:乾癬での生物学的製剤の適応は,日本皮膚科学会では,尋常性乾癬および関節症性乾癬のうち(1)紫外線療法を含む既存の全身療法で十分な効果が得られず,皮疹が体表面積の10%以上に及ぶ患者か,(2)既存治療抵抗性の難治性皮疹または関節症状を有し,QOLが高度に障害されている患者,膿疱性乾癬,乾癬性紅皮症が対象となっている〔乾癬における生物学的製剤の使用ガイダンス(2019年版).日皮会誌 129:1845-1864,2019〕.一方,禁忌としては,(1)活動性結核を含む重篤な感染症を有する患者,(2)NYHA(New York Heart Association)分類Ⅲ度以上のうっ血性心不全を有する患者,(3)脱髄疾患(多発性硬化症など)および

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