Ⅰ レーザー治療
【概説】レーザーはlight amplification by stimulated emission of radiationという言葉の頭文字を連ねてできた言葉で,直訳すると「放射(電磁)線の誘導放出による光の増幅」である.特定の色素(クロモフォア)を有する細胞や組織をレーザー光によって選択的に破壊するselective photothermolysis(選択的光熱融解理論)の概念に基づいた治療と,レーザー光の有する熱エネルギーによって非特異的な組織の変性・壊死などを起こさせる治療とがある.前者はメラニンが増加する色素性病変や血管腫・血管奇形などの血管病変,レーザー脱毛などに臨床応用されている.後者はレーザーメスとしてや組織の切開,蒸散,凝固,止血に使われ,小腫瘤の焼灼やphotoablation(光剝離),あるいは真皮内への非特異的熱損傷・再生を利用した皮膚の若返りなどに臨床応用されている.
【適応】
1.色素性病変
メラニンに吸収され,ヘモグロビンにあまり吸収されず真皮に到達できる波長で,メラノソームの熱緩和時間である50ナノ秒より短いパルス幅で照射することができるQスイッチルビーレーザー(694nm),Qスイッチアレキサンドライトレーザー(755nm),QスイッチNd:YAGレーザー(1,064nm)が主として用いられる.近年では,より短いパルス幅で照射できるピコ秒レーザー(アレキサンドライトレーザー,Nd:YAGレーザー)も用いられている.ピコ秒レーザーは,1ナノ秒未満の光パルス持続時間を作り出し,短いパルス幅と高いピークパワーによって,光機械的作用である光音響波を発生させる.刺青色素の熱緩和時間はピコ秒単位であるため,瘢痕形成のリスクが少なく,より選択的に破壊することができ,色素性病変に加え刺青治療に対する有効性が示されている.①太田母斑や異所性蒙