診療支援
治療

皮膚外科手術の基本(生検)と外来で行う小手術
Basic of dermato-surgery (biopsy) and Office dermato-surgery
松下 茂人
(国立病院機構鹿児島医療センター部長)

Ⅰ 皮膚外科手術の基本(生検)

【概説】皮膚外科学とは皮膚科学の知識が基本になる疾患の手術治療学である.皮膚疾患の確定診断をつけるうえで基本となるのは病理診断学であり,病理診断のためには皮膚外科手技のもとでの組織採取を意味する「生検」が不可欠となる.ここでは,生検や簡単な皮膚外科手術を行うにあたって必要な基本的な点について解説する.

【適応】生検については,肉眼所見やほかの検査所見で診断が確定できない疾患や,病理組織学的な評価や電子顕微鏡・蛍光抗体法による検索が必要な疾患,微生物学的検査やフローサイトメトリー,遺伝子解析などを必要とする疾患が適応となる.

【術前準備と心がける注意点】生検や皮膚外科手術前には必ず病変部の写真を撮影しておく.病変の解剖学的部位や分布がわかるような全体像と,強拡大像,生検する部位をマーキングした写真を撮影しておく.超音波(エコー)所見やダーモスコピー所見を併せて得ておくと病理診断に難渋したときの一助になりうる.炎症性疾患の生検を行う際には,病変が比較的新しいもので搔破などの2次的変化が加わっていない部位を選択する.高齢者の下腿のようなうっ滞の影響を受ける部位や,ケロイドや創傷治癒の遅延が懸念される部位はできれば避けたい.自己免疫性水疱症を疑うときには,蛍光抗体法を考慮して周囲の正常皮膚を含めた生検を行う.循環障害を伴う病変では,縫合創の離開が起こりうるリスクと生検で得られるベネフィットについて,事前に患者・家族に十分に説明しておく.腫瘍性疾患の生検は,良悪性の判断やその後の手術計画を立てる目的で行われる.ケラトアカントーマを疑ったときには,全体構築がわかるように全切除,あるいは病変を横断するように紡錘形にメスで生検する.メラノーマを疑ったときには,部分生検では診断を誤る可能性があるため,全生検が望ましい.皮下腫瘍の生検は,事前に画像検査を行って病

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