診療支援
治療

培養表皮移植
Cultured epidermal autograft
藤田 靖幸
(市立札幌病院皮膚科医長)

【概説】自家培養表皮移植は,患者自身の皮膚を採取して表皮細胞を培養し,シート状になった表皮細胞を移植することで上皮化を目指す治療法である.本邦においてはジェイス(株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング;J-TEC)が唯一の該当製品である.2009年に重症熱傷に対して,2016年には先天性巨大色素性母斑における術後皮膚欠損に対して,そして2019年には栄養障害型および接合部型表皮水疱症に対して保険診療として承認されている.

【適応】重症熱傷においては,自家植皮ができない重篤な広範囲熱傷で,受傷面積(深達性Ⅱ度熱傷およびⅢ度熱傷の合計)が体表面積の30%以上を占める症例が適応になる.急性期治療を過ぎて真皮が肉芽組織によって再構築されており,かつ上皮化が進まない部位が主な対象部位になる.先天性巨大色素性母斑では,切除面積が体表面積の5%以上を占めるなど,通常の皮弁術や植皮術では対応が困難な症例に対して使用を検討する.切削術直後などの真皮が露出した部位や,あるいは切除後に真皮が再構築された部位に対して実施する.表皮水疱症では,病型が栄養障害型あるいは接合部型であって,4週間以上にわたって潰瘍が持続,ないし潰瘍を慢性的に繰り返す部位が治療対象になる.上記2疾患と異なり,表皮水疱症は遺伝子変異による先天性皮膚疾患であるため,採皮箇所を慎重に選定する必要がある.基本的には水疱を形成していない非病変部から採皮するが,近年は重症型表皮水疱症において,後天的に一部の皮膚が遺伝子レベルで治癒している現象(復帰変異モザイク)が報告されている.島状に正常皮膚がみられる部位は復帰変異モザイクを生じている可能性があるため,採皮時に全身を確認し,そのような部位があれば積極的に選択する.

【使用方法】①採皮:まずJ-TECに連絡を取り,移植予定日と移植予定枚数を踏まえて採皮日と培養スケジュールを決

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