病態
漿液性丘疹が集簇して円形ないし卵円形の境界明瞭な貨幣大程度の湿疹局面を形成する疾患である.
【病因・発症機序】若年者ではアトピー素因を基盤にもつ者に多く,中年以降では乾燥皮膚がしばしばみられることから,表皮バリア機能の低下から微小な皮膚炎が生じ,それが次第に拡大・融合して湿疹局面が形成されるものが多いと考えられるが,搔破や細菌感染,接触アレルギーの関与などその発症メカニズムは単一ではない.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】うっ滞性皮膚炎,アトピー性皮膚炎,接触皮膚炎,体部白癬,扁平苔癬,乾癬,Gibertばら色粃糠疹,菌状息肉症,Bowen病,乳房Paget病などが挙げられる.
【問診で聞くべきこと】アトピー性皮膚炎の既往や家族歴の有無,入浴時の清拭方法などの生活習慣,外用薬の使用歴などを聞く.
【臨床症状からの診断】①境界明瞭な貨幣大のびらんや痂皮を伴う紅斑性湿疹局面が多発し,時に小膿疱や小水疱を混じる.湿潤性皮疹は数週間の経過で次第に乾燥して鱗屑を伴う赤褐色の浸潤性紅斑局面となる(図4-11)図.②皮疹は,下腿に初発することが多く,次第に四肢,体幹に新生,拡大していく.③周囲の皮膚には乾燥や粗糙化がみられることが多い.また,しばしば漿液性丘疹や小水疱などの衛星病巣が周囲にみられる.
【必要な検査】①接触皮膚炎が疑われた場合には皮疹軽快後に被疑物質によるパッチテストを行う.体部白癬の除外のためには苛性カリ法による鱗屑の直接鏡検を行う.②乾癬,扁平苔癬,菌状息肉症,Bowen病,乳房Paget病などは,皮疹部の皮膚生検を行い,それぞれの疾患に特徴的な病理学的所見から鑑別する.
治療
ステロイド外用と,必要に応じて抗ヒスタミン薬の内服を行う.皮膚の乾燥を防ぐスキンケアも重要である.
a.皮膚の乾燥を防ぐスキンケア
保湿外用薬を朝と入浴直後に塗布することが望ましい.特に入浴直後は増加し
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