診療支援
治療

色素性痒疹
Prurigo pigmentosa
水川 良子
(杏林大学臨床教授)

病態

 色素性痒疹は,背部,胸部(特に乳房間部),鼠径部などの汗の溜まりやすい部位を中心に,網目状,唐草模様様の特徴的な色素沈着を認める疾患で,激痒とともに米粒大前後のやや浮腫性の紅色丘疹が先行する(図4-19,図4-20).1971年長島らにより初めて報告された.皮疹は消長を繰り返しながら融合,拡大する.本邦を含めたアジアからの報告が多く,若い女性に好発する.外的刺激(ブラジャーや衣類,カバン類などの摩擦およびアレルゲンとの接触),断食を含めたダイエット,糖尿病やペットボトル飲料の多飲,運動負荷による発汗の関与などが誘因として挙げられ,ケトーシスとの関連が示唆されている.また,感染症としてPityrosporumBorrelia,ピロリ菌との関連も報告されている.


診断

 診断は主に臨床症状による.典型例では診断は比較的容易で,特徴的な色素沈着に加え,好発年齢や皮疹の分布,周期性の有無を参考にする.前述した外的刺激やダイエットなどの誘因が確認できれば,診断の一助になる.網目状色素沈着のない初期病変では臨床診断は難しく,網状に配列する紅色丘疹を認める.晩期には網目状の色素沈着のみを残す.非典型例では水疱や膿疱を形成し,片側性を呈することも報告されている.

【病理組織学所見】苔癬型の組織反応であるが,病期により異なる.初期には,好中球優位の表皮海綿状態や真皮上層の細胞浸潤を認め,病期の進行とともに水疱形成や表皮細胞の壊死性変化を伴う.極期を過ぎると修復機転による表皮肥厚とメラノファージを伴い色素沈着を形成する.

【血液検査所見】高ケトン血症(ケトーシス)を伴うことが多く,血中尿中ケトン体の有無を確認する.糖代謝異常にも注意を要する.

【鑑別診断で想起すべき疾患】類似の色素沈着をみる融合性細網状乳頭腫症(CARP:confluent and reticulate papillomat

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