病態
臨床的に環状を呈する紅斑を総称して,広義の環状紅斑という.環状紅斑を呈する疾患を表6-1図にまとめた.小紅斑として始まり,遠心性に拡大する経過のなかで,中央の紅斑が消褪し,環状を呈する.膠原病(エリテマトーデス,Sjögren症候群),感染症,悪性腫瘍,薬剤など原因があるものと原因不明のものがある.壊死性遊走性紅斑はグルカゴノーマ症候群(膵臓のグルカゴン産生腫瘍)などに伴う必須アミノ酸欠乏に伴う表皮の蛋白合成阻害によって生じると考えられており,臨床的に表皮の壊死によるびらんなどの症状を伴う.慢性遊走性紅斑はスピロヘータの1種であるボレリア(Borrelia)感染症をマダニが媒介し,発症する.日本ではシュルツェマダニによることがほとんどである.本症は4類感染症のため,診断したら,保健所への届出を行う.リウマチ性環状紅斑はレンサ球菌感染症であるリウマチ熱の初期に生じる環状紅斑である.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】①蕁麻疹,乾癬,体部白癬,環状肉芽腫,自己免疫性水疱症,成人Still病なども環状の紅斑を呈することがあるが,経過,直接鏡検,血液検査,生検などの検査で鑑別する.②壊死性遊走性紅斑は亜鉛欠乏症に臨床が似ることがあるので,血中亜鉛値も必要に応じて測定する.
【問診で聞くべきこと】①環状紅斑では膠原病,感染症,悪性腫瘍,薬剤が背景に存在しうるため,既往歴と全身症状を聞く.具体的には,発熱,関節痛,体重減少,全身倦怠感,薬歴の聴取である.②特に亜急性皮膚エリテマトーデス,Sjögren症候群を疑うときには,発熱,関節痛,口内炎,眼や口腔内の乾燥症状の有無を確認する.新生児エリテマトーデスを疑う場合には母親にエリテマトーデス,Sjögren症候群がないかどうかを聞くが抗SS-A抗体を有するも無症状者の場合もあるので,無症状でも母親の血液検査を行う.③壊死性遊走性紅斑の場合
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