Ⅰ 手掌紅斑
病態
肝硬変をはじめとする慢性肝疾患や妊娠,甲状腺機能亢進症,膠原病〔関節リウマチ,全身性エリテマトーデス(SLE)など〕,慢性肺疾患などの基礎疾患に伴って発症することが多く,デルマドロームとしての側面もある.一方,家族発生例もある.内分泌ホルモンの異常,特に血中エストロゲンの上昇により,毛細血管と細小動脈の拡張,増数によって生じる紅斑である.
診断
手掌の母指球部,小指球部,および手指の付け根を中心としてみられる紅斑である(図6-6)図.時に紅斑が手掌足底全体に及ぶこともある.紅斑を触診すると皮膚温が上昇しているのがわかる.肝疾患を背景としてクモ状血管腫を合併していることが多いので,その有無を診察で確認する.検査では背景に基礎疾患がないかどうか,肝機能検査,腹部超音波検査などを施行する.
治療
特に治療法はない.患者には基礎疾患検索の目的で検査が必要であることを説明する.あれば,基礎疾患の治療を行う.
Ⅱ 爪囲紅斑
病態
手指の爪甲周囲,主に近位爪郭か側爪郭にかけて生じる紅斑(図6-7)図で,皮膚筋炎と全身性エリテマトーデスで高頻度に認められる.
診断
爪囲に発赤と毛細血管拡張がみつかる.基礎疾患として皮膚筋炎,全身性エリテマトーデスがないか調べる.まず,問診でRaynaud現象の有無を聞く.皮膚筋炎でみられるヘリオトロープ疹,鼻翼周囲の紅斑,V徴候,ショール徴候,むち打ち様紅斑,多形皮膚萎縮症(ポイキロデルマ),Gottron徴候,mechanic's hands,爪上皮出血点などの皮疹の有無を確認する.加えて,全身性エリテマトーデスでみられる脱毛,蝶形紅斑,円板状エリテマトーデス,凍瘡状ループスなどの皮疹の有無についても確認する.検査は血算,抗核抗体,筋原性酵素,補体などを中心に調べる.
治療
特に治療法はない.基礎疾患の治療を優先的に行う.
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