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治療

IgA血管炎(アナフィラクトイド紫斑)
IgA vasculitis(Anaphylactoid purpura)
鬼頭 昭彦
(A*STAR Skin research labs research scientist)

病態

 IgA抗体優位の免疫複合体の沈着が小血管に証明される血管炎で,皮膚,消化管,腎糸球体を障害し,関節痛あるいは関節炎を合併することもある.過去にはアナフィラクトイド紫斑,Henoch-Schönlein紫斑病,アレルギー紫斑病などとよばれていたが,2012年にChapel Hill会議でIgA血管炎へと名称が変更された.

【頻度】小児では最も頻度の高い血管炎で,1万人につき約2人発症するとされる.発症は小児(4~7歳がピーク)に多く,やや男児に多い.成人の発症頻度は小児の1/5~1/10と低いが,小児と比較して再発率が高く,重症の腎障害が多い.

【病因・発症機序】微生物感染(細菌,ウイルス,リケッチアなど),薬剤,悪性腫瘍,食物,その他の環境因子の関与が疑われており,これらの抗原とIgA抗体による免疫複合体による血管炎と考えられている.特に小児例では,溶血性レンサ球菌による上気道感染が先行することが多く(30~50%),病因として重視されてきたが,近年その頻度は低下している.

【臨床症状】皮膚症状(100%),関節症状(60~75%),消化管症状(50~65%),腎症状(20~55%)の4症状がさまざまな順序,重症度で出現する.①皮膚症状:血小板減少および血液凝固異常を伴わない紫斑が全例でみられる.軽度の隆起を伴う紫斑(palpable purpura)が下肢を中心に出現するが,臀部や上肢,体幹や顔面にも広がることがある.成人ではしばしば血疱,潰瘍形成もみられる.3~10日程度で安静とともに自然消失するが再発しやすい.②関節症状:膝関節痛や足関節痛が多く,7~10日程度続く.③消化管症状:腹痛の頻度が高く,ほかに嘔吐,下痢,便潜血陽性などの症状を生じうる.重症例では腸重積,梗塞,穿孔を生じることもある.内視鏡ではびまん性の粘膜発赤,点状出血,びらんや潰瘍などがみられる

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