病態
遺伝的な要因で掌蹠に過角化を呈する疾患群.掌蹠皮膚に発現する各種の角化関連遺伝子に変異を生じることにより,高度な角質増殖を生じる(図8-2)図.
【頻度】罹患率は病型で大きく異なり,アジア人では長島型の頻度が最も高く,本邦では1万人に1人程度と推定される.
診断
【鑑別診断で想起すべき疾患】掌蹠に限局する乾癬,毛孔性紅色粃糠疹,扁平苔癬などの炎症性角化症.鶏眼・胼胝・ウイルス性疣贅や後天性掌蹠角化症などを除外するため,皮疹部からの病理組織診断を行う.
【問診で聞くべきこと】掌蹠以外の過角化病変の有無.潮紅の有無.発症時期.病変が継続的に存在するのか.家族・親戚の同症・類症の有無(遺伝形式).入浴・プール時の掌蹠浸軟の有無など.
【確定診断】(表8-2)図非症候性では,皮疹の形態や分布のパターンから大きく,①びまん性,transgrediens(-),②びまん性,transgrediens(+),③非びまん性(線状・点状・限局性など)の3つに病型分類される.他臓器疾患を合併すれば,④症候性の掌蹠角化症を考慮する.さらに,病理・電顕所見,遺伝形式に加えて可能な症例では遺伝子解析を行い診断を確定する.
治療
一般方針は遺伝性魚鱗癬に準じる(→,「遺伝性魚鱗癬」の項参照).根本的治療はいまだなく,サリチル酸ワセリンや尿素軟膏などの角質溶解薬の塗布や,カルシポトリオール含有軟膏の塗布,レチノイド内服を行う.掌蹠多汗が存在する場合,尋常性疣贅,足白癬や嫌気性菌による悪臭などが発生しやすいため,液体窒素療法や抗真菌薬,抗菌薬の投与,清潔などで対応する.症候性で合併症があれば専門医へのコンサルテーションを行う.
a.内服療法
Px処方例 下記を併用する.
チガソン薬カプセル(10mg) 1回1カプセル 1日2回
フラビタン薬錠(10mg) 1回1錠 1日2回
b.外用療法
Px処方例 下記のいずれかを用いる
関連リンク
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/遺伝性魚鱗癬
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