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治療

Hailey-Hailey病
Hailey-Hailey disease
西江 渉
(共愛会病院部長)

病態

 表皮角化細胞Golgi装置のカルシウムポンプであるATPase secretory pathway Ca2+ transporting 1(ATP2C1)をコードするATP2C1遺伝子の変異によって発症する遺伝性疾患である.表皮角化細胞は,棘融解を生じ表皮内水疱をきたす.本疾患は,ATP2C1遺伝子に1つの機能喪失変異を生じると発症する常染色体優性遺伝形式を呈するが,片アレル由来のみのATP2C1蛋白量では不足するためhaploinsufficiencyと考えられている.


診断

【鑑別診断で想起すべき疾患】間擦疹,カンジダ性間擦疹,白癬,膿痂疹,乳房外Paget病,一時的棘融解性皮膚症など.

【問診で聞くべきこと】遺伝性疾患だが,成人以降(多くは30~40歳代)に発症することが多い.したがって家族歴だけでなく発症時期の聴取は重要である.また,冬季より夏季に悪化しやすい症例が多いため,季節による症状の変動がないか尋ねる.

【臨床症状からの診断】腋窩や肘窩,膝窩,鼠径部,肛門周囲や頸部などの間擦部が好発部位で,左右対称性に生じ瘙痒を伴うことが多い.紅斑上に破れやすい小水疱とびらんが多発し,膿痂疹に類似した皮疹を呈する(図10-8).浸軟した角質を付着し悪臭を伴うことも多い.

【必要な検査とその所見】病理組織学的に,表皮細胞は棘融解を生じ表皮内水疱を呈する.棘融解細胞には,少数の細胞間橋で細胞間接合を維持した細胞も混じる.表皮基底細胞一層のみが真皮乳頭層直上に残り,あたかも絨毛様にみえる所見が特徴的である.Darier病に類似した異常角化細胞を認めることもある.蛍光抗体直接法や間接法は陰性である.本症は,黄色ブドウ球菌などの細菌や真菌感染を合併していることが多いため,細菌や真菌感染症と誤診しないよう注意する.遺伝子変異検索を施行すると,ATP2C1遺伝子に変異を同定可能である.


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