診療支援
治療

化膿性汗腺炎
Hidradenitis suppurativa
葉山 惟大
(日本大学)

病態

 化膿性汗腺炎は腋窩や臀部に発生する炎症性疾患である.再発性であり,重症化すると患者の生活の質を著しく障害する.慢性膿皮症という病名が知られているが,化膿性汗腺炎と同義である.本邦において感染症ととらえられていることが多く,病態が正しく認識されていない.実際の病態生理は毛包を中心とした自己炎症反応であり,近年は生物学的製剤であるTNF-α阻害薬などが治療に使用されるようになっている.

【頻度】本邦における頻度はレセプトベースで0.0039%と報告されているが,疾患概念が広まっていないため頻度はもっと高い可能性がある.男女比は2:1で男性に多い.

【病因・発症機序】遺伝要因と環境要因の関与が考えられているが,本症の病因はいまだに不明な点が多い.近年,本症の病態生理は毛包を中心とした慢性自己炎症性疾患であることがわかってきた.毛包漏斗部の角質増殖と毛包上皮の増殖による毛包閉塞は初期変化であり,その後に囊腫を形成する.囊腫が破裂すると著明な局所免疫反応を誘導し,痛みを伴う炎症と膿瘍を形成する.さらに好中球やリンパ球,マクロファージ,樹状細胞などの炎症細胞が集積する.炎症が継続し最終的に類洞や瘢痕を形成する.Notchシグナルの異常があるとこれらの炎症が惹起されやすくなる.Notch受容体の切断に関与する細胞膜内酵素であるγ-secretaseの遺伝子変異が,本症の原因の1つとして注目されている.


診断

【問診で聞くべきこと】本邦では臀部に症状が発生する患者が多いが,腋窩にも症状が発生する.患者自身も腋窩と臀部の症状が同一の疾患と思っていないこともあるので,臀部の症状で受診しても,腋窩など他の部位に症状ができたことがないかを問診する.まれではあるが家族歴が参考となることがある.

【臨床症状からの診断】腋窩と鼠径,肛門性器部,臀部などアポクリン汗腺が多い部位が好発部位であり,有

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?