Ⅰ Werner症候群
病態
思春期以降に,白内障,動脈硬化,糖尿病,白髪,脱毛,嗄声,皮膚の萎縮・硬化,部分的な皮下脂肪の喪失などの老化徴候が出現し,悪性腫瘍を併発しやすい遺伝性疾患.
【頻度】日本人では100万人あたり3~45人とされ,世界の報告症例の80%程度が日本人である.
【病因・発症機序】常染色体劣性遺伝形式を示し,近親婚由来の患者が多い.RecQ型のDNAヘリカーゼ(RecQ3 helicase)をコードするWRN遺伝子が,疾患責任遺伝子として同定されている.
【臨床症状】①成長遅延は10歳代から生じるが,ほとんどの症状は思春期以降に生じる.皮膚症状としては,皮膚の菲薄化,毛細血管拡張,色素沈着や脱色素斑,四肢末端からの脂肪萎縮と皮膚硬化がみられる.足底や足縁では,骨の突出部や荷重部に角質増生(鶏眼,胼胝)と難治性潰瘍を生じる.アキレス腱部などの皮下や軟部組織に石灰沈着を生じる.白髪,禿頭に加えて,顔面の皮膚萎縮による口周囲の放射状の皺や細くとがった鼻による鳥様顔貌と称される特徴的な外観を呈する.扁平足もみられる.②皮膚以外の症状としては,低身長,低体重,細い四肢とビア樽状体幹による特徴的な体型や若年性白内障,嗄声(甲高いしわがれ声),筋肉の萎縮,骨粗鬆症,動脈硬化,性腺機能異常,糖尿病,脂質異常症,高尿酸血症などを生じる.さらに悪性腫瘍の発生が多く,なかでも間葉系悪性腫瘍(肉腫)が多い.足底に好発する末端黒子型悪性黒色腫の発生頻度が高いことが知られており,注意を要する.
診断
表15-1図に示す診断の手引きを参照に症状の有無を精査する.高頻度に生じる両側性の若年性白内障と特有の嗄声が診断上重要となる.WRN遺伝子変異の検索は,千葉大学大学院医学研究院内分泌代謝・血液・老年内科学で行っている.
【鑑別診断で想起すべき疾患】全身性強皮症,アクロジェリアなどが鑑別に挙げられ
関連リンク
- 治療薬マニュアル2024/スルファジアジン銀《ゲーベン》
- 治療薬マニュアル2023/(合剤)精製白糖・ポビドンヨード《ユーパスタ ソアナース》
- 治療薬マニュアル2024/(合剤)精製白糖・ポビドンヨード《ユーパスタ ソアナース》
- 治療薬マニュアル2024/トラフェルミン(遺伝子組換え)《フィブラスト》
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/皮膚萎縮を主徴とする疾患
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/多形皮膚萎縮を主徴とする疾患
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/環状を呈する皮疹を主徴とする疾患
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/慢性色素性紫斑
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/エリテマトーデス(4)その他
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/穿孔性皮膚症
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/ステロイド後脂肪織炎
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/面皰母斑
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/その他の脱毛症
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/肝疾患と皮膚病変
- 今日の診断指針 第8版/皮膚エリテマトーデス
- 今日の皮膚疾患治療指針 第5版/内分泌疾患と皮膚病変
- 今日の診断指針 第8版/皮膚アミロイドーシス