診療支援
治療

弾性線維性仮性黄色腫
Pseudoxanthoma elasticum:PXE
岩永 聰
(長崎大学)

病態

 弾性線維性仮性黄色腫(PXE)は,弾性線維の変性と石灰化を特徴とする遺伝性疾患である.弾性線維に富んだ組織である皮膚や眼,血管などが進行性に障害され,視力障害や虚血性心疾患,脳血管疾患などを合併する.

【頻度】常染色体劣性の遺伝形式をとり,約15万~16万人に1人とされる.

【病因・発症機序】2000年に原因遺伝子がABCC6であることが明らかにされ,ABCC6はMRP6という膜貫通型蛋白をコードしている.MRP6はATP介在性に肝臓から血中へピロリン酸を放出し,PXE患者では血中ピロリン酸濃度が低下していることが報告されている.ピロリン酸は強力な抗石灰化因子であることが知られているが,皮膚や眼,血管などに石灰化が起こる詳しいメカニズムはいまだ不明である.

【臨床症状】頸部や腋窩,肘窩,鼠径部,臍周囲などに黄白色調丘疹や局面形成がみられ,時には皮膚の弾性の消失により太い皺,弛緩した皮膚となる.また,口腔内粘膜に白色網状斑がみられる.


診断

 皮膚病変が臨床的に明らかである,または病理組織学的に証明された場合において,網膜色素線条を伴う際には確定診断となる.皮膚病変または網膜色素線条のどちらか一方しか認められない場合には疑い症例となり,診断確定には遺伝子検査が必須となる.

【鑑別診断で想起すべき疾患】PXE-like papillary dermal elastolysisや,white fibrous papulosis of the neck,ペニシラミン内服患者などでは,類似の皮膚症状を呈することがあり,臨床的には鑑別が困難である.鑑別のために皮膚生検を行ったほうがよい.また,骨Paget病,鎌状赤血球症,Ehlers-Danlos症候群,鉛中毒,外傷により網膜色素線条を呈することがあるため注意を要する.

【問診で聞くべきこと】患者自身は皮膚病変を自覚していない場合も多く,眼科

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